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月例中国統計ウォッチ 10月分

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ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では、不動産、設備投資などストック面の一部が底入れし、もともと好調なフロー面も含め、全体として悪くない結果だったと述べた。今月もその流れが継続している。

最高値更新が続く

10月の鉱工業生産は前月比+0.4%と上げ足した(図1)。図2が示すリアルタイムの増加率は、最近はおよそ年率5%のラインを下回ったことはない。なるほどこれが2017年は6.5%、18年は5.9%、19年は6.1%であったから多少劣るが、大きな変調を示すものではない。


フロー面の統計は、概して好調な右上がりトレンドを維持している。この鉱工業生産と、その内訳のうち、電力、粗鋼、自動車、半導体生産は、末端10月が多少マイナスのものでも、グラフの線形としては右上がりである(図3~7)。


輸出入数量も結構な右上がりが続く(図17)。9月に最高値を更新した輸出数量には多少の反動減が出ているが、中国経済の牽引力を示す輸入数量は10月に一気に伸びて、一昨年に記録した最高値にほぼ並ぶところまできた。


実質小売消費は、10月もプラスとなって、これも過去最高値を更新した(図11)。ただし、自動車販売台数は過去最高水準となった後は伸び悩んでいる(図12青線)。これは何も中国に限った話ではないが、コロナ明けで積滞需要が一服したところで一旦息が切れる。ただ、この水準は何度も経験しており無理して引き上げたバブル的なものではないから、後は下がるばかりというものではないと考えている。


先月初めて増産に転じたセメント生産は、10月も上昇して底入れが確実になってきた(図5)。併せて、社会融資規模とKOMTRAXの上昇も3か月目となっている(図21灰線、図25)。先月号で残るは地価と述べたが、10月は地級市の地価もマイナスから横ばいになり(図23)、不動産開発指数も下がらなくなった(図24)。ストック面の統計も最終的な反転上昇が近づいている印象だ。


米中首脳会談をめぐっては、相変わらず経済を立て直したい習近平が歩み寄る的な解説が横行しているが、筆者が習近平なら下手に出る必要性は感じないだろう。軍事面での対立緩和、それだけが中国が手にしたいものであると考える。

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