別府 浩一郎

2021年6月12日2 分

雇用指標まちまちが齎す米株じり高

5月20日付当週報ではFF先物や米国債の変動性指数MOVEの動きを見たが、後者の沈静化傾向は5月米国CPI発表前も変わりなかった。その意味では、CPI前年比5.0%上昇(コアCPI3.8%上昇)に対し、米10年物金利が1.4%台前半への低下で反応したことも含意されていたと言って良いだろう。家計のインフレ観はどうか。ミシガン大調べ消費者サーベイにおける今後1年インフレ予想は、5月4.6%から直近6月速報値では4.0%に低下。今後5年インフレ予想(年率)も3.0%から2.8%へ低下。今後1年インフレ予想の激しい動きに目を奪われがちだが、今後5年インフレ予想が1994年以降の2.2%~3.5%のレンジ内で十分収まりそうなことにも注目したい。

米雇用に関する統計でも非農業部門雇用者数の増減への注目度が高く、「予想より弱い」ことが強調されがちだが、新規失業保険申請件数は緩やかな改善が継続している。しかし、この組み合わせによって米国株はじり高を継続し得ているとも言えよう。過去最高の求人件数と伸び悩む採用件数も「ミスマッチ」と評されるが、自発的離職件数の増加が示すように雇用市場の実態は採用件数が示すよりは強い。それが消費者の雇用現状認識の大幅改善でも確認された。

米国家計純資産を個人可処分所得で割ったストック・フロー・レシオは本年第1四半期に急低下した。無論、大規模家計支援策により分母が異様に膨らんだためだ。従って、同レシオと最広義失業率のXYグラフも相当修正して見る必要がある。今後は資産価格の上昇は緩やかに抑制しつつ、縦方向での改善進捗が望ましい。2013年第4四半期以降の動きだ。