藻谷 俊介

2021年10月29日2 分

鉱工業生産 9月分

落ち込みの7割が自動車工業だったとしても、残る3割だけで線形はピークアウトを形成するので(図2B)、やはりマクロ的に見て景気が調整期に入っていることは疑いない。相変わらず報道は逸話に寄りがちで、読者に伝えるべき全体像を欠いていると言える。

また、業種で言うなら自動車の次にインパクトの大きいエレキ系の3業種(図3G~J、図2F)の調整にも触れるべきだろう。6頁のグラフにも頭が欠けたものが増えた。鉄鋼(図3D)、化学(図3L)もここから減産含みだ。このため、仮に10-11月で自動車の生産が急回復しても、全体の伸びはほとんど期待できず(図2A赤線)、結局、記者は来月は別の逸話で不振を説明することになる。つまり逸話が逸話としての意味を持つのは、マクロ的な方向と関係のない、ごく単発的な事象を説明する時だけである。

とは言え、筆者はWeekly Economics 10/18号「中国統計ウォッチ」で述べた通り、不況が来たという認識は持てないままでいる。なぜなら例えば図2Aや図3Aがそうであるように、悪化が加速してストンと落ちていかないからである(悪循環らしき様子がない)。もちろん図2J~Kは不況の瀬戸際にあることを示しているように見えるが、一方で図2Hは不況の手前で踏みとどまっているようにも見える。図5頁もそろい踏みの悪化ではない。中国がまだ調整するか、そろそろ上がるかで大きく違うと思われるので、引き続き事態を見守りたい。