藻谷 俊介

2021年9月30日2 分

鉱工業生産 8月分

想像以上に悪い結果で、図2Aは予測も含めてついにピークアウト線形になってしまったし、図3Aは大きく「意図せざる」方向に悪化した。図3Cで予測のポツポツが上がり続け、赤線が下がり続けるなら典型的な天井であり、不況的になる可能性も考慮する必要がある。

右図の経産省季調がぶれる度に、増産、減産に逸話的説明(車載半導体不足~東南アジア感染)を加えた報道が繰り返されている。車載半導体不足についても、思ったほど影響がなかったと言ってみたり、やはり長引いていると言ってみたり、ぶれに合わせて出したり引っ込めたりである。しかし、3頁の悪化が輸送機械以外にも広く見られていることを考えるだけでも、そうした逸話で済む話には思えない。

先月も述べた通り、これは2018~19年の減産において、大雨のせいにしたり、地震のせいにしたり、月ごとにアネクドータル(逸話的)な解説を加えた挙げ句、後になって「やはり景気後退でした」となったのと同じで、要注意である。統計発表時に逸話的なレクチャーを繰り返し、書くのに便利な項目を記者に提供して、長年お茶を濁してきた官庁にも改革が必要である。

そして筆者にも反省が必要だ。先月号ではハイテク関連は再び伸び始めたと楽観的な解釈をしたが、今回、図6Bが「意図せざる在庫増」と言うべき上昇を示し、図6Hも撥ねた。6頁全体として8月のハイテク生産はまだ屈折していないが、「意図せざる」が本質ならば、9月以降に折れてしまう可能性も高い。上下両睨みで緊張感をもって新しいデータを見ていくしかないと考えている。