藻谷 俊介

2021年5月31日2 分

鉱工業生産 4月分

先月号では、跳ね上がっていた4月の予測指数について話がうますぎる(too good to be true)のではないか、と述べておいた。世界鉱工業生産が減速していたからである。

4月はそれなりのプラスではあったが、予測されていた上昇の半分ほどに終わった(図3C)。特に強気だった設備投資系の「生産用機械」と「電子部品デバイス」の計画未達が大きく(図3B)、全体としても久々に大きな未達となっている(図3A)。電子部品デバイスの世界規模での調整感(在庫率増)は6頁でご確認頂きたい。その上、5-6月は予測そのものも慎重になったので、目先はむしろ減産になると言うのが現時点での推計である(図2A)。かつがつコロナ前水準は回復したが、当面はそこまでだったわけだ。

世界生産は、減速してはいるが4月も右上がり傾向は維持している(図4A)。もちろん筆者も不況はまったく想定していない。5頁の各国比較は、谷間を起点にしているために、コロナ谷が深かった国が上に出るという誤解を生みやすい状況になっている。7月あたりからは再び使えるようになるだろう。

なお、日経が減産の言い訳としてしばしば使う車載半導体不足だが、筆者は数字に出てくるのは5月からと言ってきた。図3Kを見ると5月は急落しているが6月の予測は戻っており、その通りに行けば実質的には5月だけのインパクトであるようだ。自動車生産がその前から頭打ちなのは、世界販売がそうだからであり、繰り返し記事の中で半導体不足を持ち出すのは、悪い意味でのジャーナリズムである。