藻谷 俊介

2022年2月28日2 分

鉱工業生産 1月分

2ヶ月連続のマイナスで、再び減産トレンドに転換してしまった懸念も覗いたが、2-3月の予測はこれ以上のマイナスを示しておらず(図2A赤線)、長期的なものではないだろう。

新聞の特性として一番影響したセクターだけを記事にすることがあるが、3頁のグラフ赤線を見れば分かるように、鉄鋼、化学などの素材系のマイナスも大きく、部品不足に絞ることはできない。やはり時期的にはオミクロンの影響だった可能性が高いだろうか。

予測外れという点では、自動車が圧倒的に貢献しているが(図3B)、これには先月号でいみじくも予想したように、予測が強すぎたと言う面がある(図3Kの黄点、青点)。また、本日同時発行の「EcoShot乗用車八社生産」を見ると分かるように、国内で1月に減産したのはトヨタ、スズキ、ダイハツの3社のみで、部品不足に普遍的な原因は窺えない。むしろ輸送機セクターの問題は、先月号などで指摘してきた長期的な生産減少傾向(BEV参入の遅れなど競争力の低下)にある。

世界生産も1月は弱めで、現時点では横ばい(図4A)。とは言え、図2Aとは線形がまったく異なって、より活発である。日本の弱さの原因をオミクロンには特定できないが、様々な変化に対してどことなく対処能力に欠ける近年の日本の表象を見ているような気がする。ウクライナ問題という新しい懸念もあり、地盤沈下をこれ以上重ねないことを祈るのみである。