別府 浩一郎

2023年1月27日2 分

過去10年を振り返る

「アベノミクス・異次元緩和」が「円安こそ善」とする政策だったとすれば、過去10年は大成功だったと言うほかない。BIS(国際決済銀行)が発表したブロードベース(64ヵ国・地域)の実効為替レートで、2012年12月から2022年12月までの10年間において、日本は名目で-26%(第57位)、実質で-35%(第62位)だった。最近3年間、すなわち2019年12月から2022年12月は、コロナ禍対応の大幅緩和の後、歴史的インフレの下で各国中銀が高速利上げを実施、日銀だけが超緩和を維持し続けた期間だ。日本は名目で-16%(第60位)、実質で-21%(第63位)。前後に並ぶ国々は発展途上国がほとんどであり、日本がいわゆる衰退途上国であることを印象付ける。結果としての下落率もさることながら、米国、ユーロ圏、中国と比べた場合の変動の激しさも際立つ。

過去10年のうち、海外投資家は2013年のみ日本株を大幅買越しで、以後はほぼスルーだった。日銀が「金融緩和策の一環」として拡大し続けたETF買入れも海外投資家にとっては格好の売り機会となった。現在、コロナ禍で設定された「年間12兆円買入枠」は形だけのものとなっている。しかし、これがある限り、もし何らかの理由によって株価が大幅下落すれば、結局は発動され、ただでさえ低い日本株の浮動株比率が実質的に更に低下することになる。2024年、NISAが大幅拡充されるタイミングで、日銀による異様な株式へのコミットメントは段階的に縮小して行くべきではないか。それが容易に出来ないのが、「官依存体質」衰退途上国ではあるが。