別府 浩一郎

2022年4月23日2 分

超緩和漬け

FRBによる利上げ加速観測が一段と強まった。FF金利先物市場では1年先限月の清算値から算出したFF金利水準が3%台に乗せている。結果、S&P500株価指数の52週騰落率の沈静化が促進され、先週末時点で2.2%まで縮んだ。グラフで丸印を付けた3つのピーク後の局面において、今回は金融引き締めに直面していると言う点で、前2回と状況が異なる。3月22日付当週報では戻り相場を「超緩和相場の名残り」と評したが、その時期も過ぎつつある。

主要国・地域の「中銀総資産/名目GDP」を比較した時、日本のそれは度外れて高水準であるにも関わらず、日銀総裁は「超緩和を維持する」と言う。しかし、日銀自身が試算している潜在成長率は、大規模追加緩和が実施された14年度後半以降、逆に低下の一途を辿り、超緩和前の水準に逆戻りしている。日銀「生活意識に関するアンケート」調査では「長期の日本経済成長力DI」が13年央に早々とピークアウト。家計の見方は馬鹿に出来ない。結局、「超緩和漬け」の下、成長力が高まることも無く、「一般政府債務残高/名目GDP」は上昇を続けるという構図が助長される。

ところで、ウクライナ戦争を機に、ドイツが軍事費に関して従来の慎重姿勢を一変させたことが話題となった。我が国も5年以内に名目GDP比1%から2%以上へ倍増させる方向性が固まりつつある。それが実現すれば年6兆円規模の恒久財源が必要となるはずだが、どこから捻出するのだろうか。健全財政を維持して来たドイツならともかく。