藻谷 俊介

2023年5月18日1 分

貿易統計 4月分

4月の日本の輸出数量は全体としては着実に伸びて(図2A)、その勢いも過去の好況期と比べて遜色のないところに達した(図2H)。もう弱い回復ではない。

残る問題は、アメリカ、中国、EU、中東などその他向けがいずれもV字回復してきたのに、なぜかNIESとASEAN向けの輸出が底入れできていないことである(図3E~L)。半導体などテック関連の底入れは中国に先導される形で更にはっきりしてきたが(図11L)、通常は米中の回復に先んじるNIESやASEANがその波に乗れず、幅広いセクターで輸入(日本から見れば輸出)を落としている(7~8頁)。米中欧が良ければ世論的には十分だとしても、何か見落としているのか、それともただ遅れているだけなのか、筆者には心残りとなっている。

G17世界輸出も概ね回復を続けている(図3A~C)。しかし勢いは好況期の平均より弱めで、まだ本調子ではない(図3D)。そもそも本調子だと思っている人はほとんどいないだろうが、上述のNIES/ASEANの低調を含め、世界にはまだ取り残された部分があるわけだ。

そんな中で、日本の輸出数量の総合パフォーマンスが、冒頭で述べたように悪くないのは朗報であると言える。筆者が問題にしていた日本社会を覆ったコロナ酔いも終わり、為替の有利をようやく活かせるようになったのかも知れない。