藻谷 俊介

2022年4月20日2 分

貿易統計 3月分

メインチャートの輸出数量指数は、ぶれの少ない当社季調では漸増、内閣府季調では若干マイナスだったが(図2A)、どちらの線も最近の右上がり趨勢は崩されていない。Weekly Economics 中国統計ウォッチと同様に、少なくともこれまでに発表された3月の景気指標に、ショッキングな悪化はなかったと言える。

図2Eを見ると、対アジア輸出数量は想定通りマイナスだったが大きなマイナスではなく、対米は「調子に乗りすぎるアメリカ」を体現するが如く怪気炎を上げている。むろんタイムラグもあるので、これで悪化が終わりと言うことはないにせよ、戦争当事国ではない国々の景気悪化は案外小さい可能性もあると言えるのかも知れない。

図2Dを見ると、輸出入とも同じくらいの強い勢いで伸びており、原油高で輸入急増という報道ピッチは些か偏っている感じがする。結果として貿易赤字も季調ベースでは一方的に拡大する様相にはない(図3D)。このように3月の貿易統計は、懸念された悪化を示していなかった。

一方で、円安のポジティブ効果も窺えない。輸出額が円表記で大きくなるのは当たり前で、それだけでは意味がないのである。価格競争力が出て、数量(あるいはドル輸出額)が今まで以上に増えて初めて、円安の効果があったことになる。10頁を見ると輸出に占めるウェイトの大きい対米自動車輸出台数は3月も下がり、その他の国々分も含め、肝心の時に商品競争力はどうなっているのかと心配になる。確かにガソリン自動車は世界でも長期低落傾向にあるのだが(図10L)。