藻谷 俊介

2023年12月22日2 分

貿易統計 11月分

先月10月は基準年改定でデータがほとんど発表されていない状態だったため季節調整の信頼性が低く、輸出数量はマイナスで間違いないだろうと述べるにとどまったが、その後データが充足され、今回11月も大きくマイナスとなって、この間に大変な悪化があったことが改めて明らかになった(図2A)。腰折れと言うしかない状態で、唖然とするばかりである。

まったく新聞は役に立たない状態で、前年同月比で見てこれを引き続き中国のせいにしている。しかし、季節調整した図11A-C-Fを見比べれば分かる通り、足元の悪化は完全に欧米向けの悪化であって、中国向けは下がっていない。中国が悪いのなら新しい話ではないが、重要なのは欧米向けが悪くなっていると言う聞きたくもない話が現実になっていることである。

しかし、さらに困ったことは、これが日本だけの現象であることだ。図3Cが示すように、主要17ヶ国の世界輸出数量は11月も上昇を続けている。16頁はドル表記だが、日本の連続マイナスは世界の中でとても浮いた状態だ(紫線)。これを中国のせいにしてはいかんだろう。図11Mが示すように、他国は対中輸出をもっと伸ばしてきている。

実際はアメリカの輸入数量はむしろ反転上昇してきたところである(図2K赤線)。彼らが不景気で買ってくれないわけではない。しかし、5頁が示すように、素材、機械、部品など幅広く落ち込んでいる。これが競争力の低下なのか、円安で勝手に売上が増えるが故の怠惰なのか分からないが、由々しきことだ。

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