別府 浩一郎

2022年6月20日1 分

米国資産価格の現在位置

歴史的インフレを抑え込むため、FRBは急激な政策金利の引き上げを余儀なくされている。同時にこれは行き過ぎた資産価格上昇の是正過程でもある。株価(S&P500指数)は本年1月3日の史上最高値から先週木曜日まで23.6%下落、3月末から先週末まで18.9%下落。その結果、ストック・フロー・レシオ(米国家計純資産/個人可処分所得、除く非営利団体ベース)を横軸に、最広義失業率U-6を縦軸とするXYグラフ上で、左やや上方向へシフトした。雇用市場は非常にタイトなため、縦軸での動きは小さい。これに関連して、米中小企業サーベイの5月調査で、昨年9月をピークに低下基調にあった「求人中の企業」比率が再度上昇するという動きがあった。これは本来であれば悪い話ではないはずだが、一定程度の雇用市場の悪化を見込むFRBにとっては、より時間を要することを意味する。同調査では、「今後6ヵ月の経済全般見通し」、「過去3ヵ月の実績利益」の一段の悪化も目を引いた。

株式市場と並んで重要な住宅市場では、既に急失速している新築・中古住宅販売件数に続いて、住宅着工件数も急鈍化した。Fannie Maeが実施しているサーベイでも家計の住宅に関するマインドは大きく悪化している。それでもまだ、住宅建設価格高騰もあり住宅価格は高止まりしている。雇用市場も住宅価格も見るべき調整をまだ見ていない。