別府 浩一郎

2023年2月22日2 分

米住宅ローン債権の遷移率

NY連銀が発表した米国家計債務調査では、住宅ローン新規貸出額(借換を含む)が、21年第2四半期をピークに昨年第4四半期まで6四半期連続して減少したことが示された。昨年第4四半期は21年第2四半期の4割に留まった。一方、住宅ローン債権の遷移率は、正常債権から30-60日延滞債権へが0.62%だった。21年第2四半期0.27%をボトムに漸増傾向にあるが、依然低い水準だ。90日以上延滞債権への遷移率は0.12%でほとんど増えていない。30-60日延滞債権から90日以上延滞債権への遷移率は12.83%で、21年第3四半期5.51%から上昇。しかし、22年第1四半期13.08%よりは低い。これらの理由としては、住宅価格は前年比上昇率こそ急鈍化したもののピークからの下落率は軽微であること、雇用市場は引き続き堅調であることが挙げられよう。住宅市場の不振は着工件数、販売件数で顕著だが、それでも上記数値の動きは金融危機時とは異なる。

当週報の本年2月5日付号でも、過去の金融危機時と比べ米国非金融部門レバレッジが低いことを見た。筆者はS&P500株価指数52週騰落率も、昨年10月14日に記録した-19.9%を下方に更新して行く展開より、本年末には0~10%程度の水準に戻す可能性の方が高いと見ている。昨年末のS&P500指数の水準に基づけば、本年末3840~4220ポイント程度を意味する。ただし、足元では株価に強い逆風が吹いている。今月初のFOMCから3週間余りで、早期利上げ停止期待が雲散霧消。四半期決算発表を経たS&P500種全体およびセクター別の予想EPSも下振れが目立ち、決算予想ビート率も過去10年の中では明らかに低い方に位置する。