別府 浩一郎

2020年9月7日2 分

真正バブル以前の株価調整

内閣府「景気ウォッチャー調査」における現状判断DIは8月まで4ヵ月連続で改善した。もっとも改善幅は、6月に原数値で22.6ポイント、季調値で23.3ポイントだったのと比べ、7月、8月は合計でも前者が5.3ポイント、後者が5.1ポイントに過ぎない。飲食関連を筆頭に現状水準DIの回復が鈍い中では、モメンタム指標である現状判断DIや先行き判断DIが大幅改善を続けることは難しい。

米国の中小企業楽観度指数も5月、6月に各々3.5ポイント、6.2ポイント急改善後、7月は1.8ポイント悪化、8月は1.4ポイント改善と小動き。8月の100.2という水準はトランプ政権下におけるピーク、18年8月108.8を大きく下回る。一方で、前回大統領選以前、中小企業経営者の不満が鬱積していた頃よりは明らかにましな水準でもある。大統領選の接戦を示唆する一つの指標ではあるだろう。選挙の結果確定が遅れに遅れるという事態は今から憂慮すべきものだ。

米国ITセクター株価指数の200日線からの乖離率は先週水曜日に31.7%と00年4月7日以来の水準を記録。直後から株価は調整色を強めた。その前に、FRBがゼロ金利政策の超長期化を鮮明にするという出来事があった。コロナ禍の影響が甚大とは言え、金融政策が結果として株式市場の投機化を助長し過ぎるというのも問題である。幸い、今はまだITバブルのような真正バブルには至らない段階での株価調整であり、「バブル崩壊」という言葉を使うのは短絡に過ぎるだろう。