別府 浩一郎

2021年10月3日2 分

業況サイクルにブレーキ

9月のユーロ圏の主要信頼感指数では、製造業信頼感指数が前月比0.3ポイント改善の14.1と高止まりしている。特に、ドイツは前月比1.7ポイント上昇の25.6で過去最高水準である。ただ、それで株に強気になることは全く無く、ひたすら今後の悪化を警戒するモードにある。「日銀短観」9月調査では海外での製品需給判断DIが製造業全体および加工業種で過去最高を記録。素材業種もあと1ポイントに迫った。ここでも焦点は今後の悪化に向けられている。

業況判断DIのサプライズ幅では、昨年12月に大企業非製造業が6ポイント、大企業加工業種が本年3月に13ポイント、同素材業種が6月に14ポイントで、それぞれピークアウト。それと呼応する形で、TOPIXも本年3月に2012ポイントで一旦ピークアウトし、その後はレンジ相場が続いた。「菅退陣」表明後に上振れしたものの、業況サプライズからは株価は盛り上がり難い。それを分かり易く示すのが、業況判断DI実績値を横軸に、サプライズを縦軸に取った業況サイクルのグラフだ。今回9月調査では、製造業・非製造業の別、規模別、業種別を問わず、ほとんどでブレーキが掛かる形となった。

岸田新政権は「小泉政権以来の新自由主義を見直し、新しい資本主義を目指す」として、「所得再分配による格差是正」を看板に掲げている。それ自体は正しい方向性としても、預貯金に固執する国民性をますます助長するようなことになるのはいかがなものかと思う。例えば、高市氏が表明していたような「金融所得50万円以上は30%課税」は乱暴すぎるだろう。