藻谷 俊介

2020年10月19日2 分

月例中国統計ウォッチ 9月分

最終更新: 2021年1月5日

7-9月期成長率は年率6.3%が妥当

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、すべて季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。すでに先月時点で「恐らく中国経済の生産面は完全復旧したと言っても差し支えない状況」と述べたが、9月もGDPはじめそれを更に補強するようなデータが出ている。

鉱工業生産は、9月も勢いよく伸びた(図A)。先月も述べたようにコロナ谷の前後で非常に小さいマイナス段差は残ったものの、その後の勢い(速度計が示すリアルタイムの伸び率)は以前と比べて遜色ない(図A’)。その根拠となる図B~D、特5~6などの数量統計も、同じくコロナ以前のトレンドの延長線をトレースしているため、図Aがプロパガンダとは考えにくい。

昨日発表された7-9月期GDPも、当社季調では前期比年率6.3%と、ほぼまっとうな伸び率に戻った(図V、表Z)。可処分所得も従来の延長線上に回帰した(図W)。ただし、中国政府発表の季調値には問題がある(図V、図Yを拡大されたい)。どういうわけか、V字回復後の伸び率が高めになっており、当社季調の赤線に比べて、青線の勾配が大きい。その勢いはGDPで年率11.2%、鉱工業生産でも年率13.4%で、当社季調との乖離はもちろんだが、普通に考えても長期的に維持できる速度ではない。プロパガンダと決めつける理由はないが、こうした数値はいずれ青線の減速や屈折によるスピード調整に繋がるだろう。表Zで、実勢に遅行する前年同期比を見て中国の現在の成長率を年率4.9%と低く見積もるのも間違いだが、公表季調伸び率から同11.2%と高く考えるのも間違いである。

消費者心理もゆっくりとだが改善してきており(図K)、もたついていた小売販売額もグラフ末端領域の伸び率は、次第にコロナ前の勾配を回復しつつある(図H)。米中相互の貿易の増加トレンドは続いている(図特1)。トランプ再選で米中が再びlose-loseにならない限り、まずこの流れは続き得るだろう。