藻谷 俊介

2022年10月25日2 分

月例中国統計ウォッチ 9月分

弱さが残るが悪循環には入っていないようだ

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。予定日に統計が発表されなかったため憶測を呼んだが、20年以上中国統計を追っている筆者にすると時々あることであり、また必ずしも悪い数字を出し控えると言うわけではない。今回も出てきた数字は特に悪くなかった。ただその都度述べてきたことだが、統計の発表が安定しないようでは国家の体裁にかかわるという気持ちで、きちんと発表して欲しいものである。

鉱工業生産(図A)はどちらの季調値も史上最高値を連続更新した。今回は重工業系が急反発(図C~D)。半導体も多少切り返したが(特5, 8)、好調だった電力、自動車には反動減が出ている(図B, 特6)。図A'がリアルタイムで6.7%と言うのは悪くない数字だが、輸出入には勢いがなく(図S)、小売消費も頭打ち(図H)。自動車の販売台数も取り敢えずは一服と言うところで(図J青線)、どんな需要が生産を牽引しているのかが分からない。

地級市の地価の低下にはまだ終わりが見えない(特9)。今月は11大都市についても末端がマイナスに転じている。一方で、金融は多少ながら加速側に戻り始め(図Q)、建機の稼働時間を示すKOMTRAXの底入れ感も強くなっているから(図X)、サポートの動きも感じられる。GDPの反発は月次統計、特に図Aの動向から予期されていたものと隔たりなく、前年比3.9%は小さく見えるが、図Vのとおりロックダウンの谷は乗り越えている。