藻谷 俊介

2021年10月19日2 分

月例中国統計ウォッチ 9月分

改善の糸口は、消費と輸出か

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、すべて季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。メディアはどこも今さらの「中国大減速」報道だが、2月分の統計から中国の異変を察知した筆者としては、9月分の今はむしろ改善を待っているタイミングである。

鉱工業生産は図A末端の形状と図A’が示す平均伸び率がどちらも完全なフラット化を示した。発電量(図B)の頭打ちは続き、粗鋼(図C)、セメント(図D)は前例のない減産が定着し、強かった半導体生産(特6)まで末端は少し低下した。一方で、自動車(特6)は多少回復し、悪くなるものばかりではない。従って図Aも先月までの動向と大きく変わったわけではない。

鉱工業生産(図A)やGDP(図V)が折れたのは年初のことであり、今になって特に悪化したわけでもないのに、資源価格、電力制限や恒大集団など最近の理由ばかり挙げているメディアには失笑を禁じ得ない。実勢に6ヶ月遅行する前年同期比分析がもたらす毎度の勘違いなのであるが。

むしろ小売販売額(図H)が取り敢えず底割れ回避になったことや、消費者信頼感(図K)の反発、非製造業景況感(図M)のV字回復、可処分所得(図W)のにじり上がりなど、消費回りには筆者が期待した以上の強かさがある。また、輸出にも踊り場脱出感があり、貿易黒字も増えてきた(特1~3)。ニュースは四面楚歌だが、全体としても悪化が加速する気配はなく、消費、輸出を中心に景気が戻る糸口が見えたような気がする9月統計だった。