藻谷 俊介

2021年9月16日2 分

月例中国統計ウォッチ 8月分

悪化が止まらない

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、すべて季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号は「ついに良いところがまったくなくなった7月」と題したが、8月はそこから更に悪化したと言い切れる内容だった。

鉱工業生産は図A末端が示すとおりフラット化。図A’が示す平均伸び率も2%台まで下がり、中国としては不況と言っても良い低迷ぶりである。堅調だった発電量(図B)も頭が下がりはじめ、粗鋼(図C)、セメント(図D)、自動車(特6)はますます減産が定着して、個々に見れば不況のグラフと言える線形だ。半導体生産(特6)だけがまだ増えているが、これは産業安保としての増産でもあるはずで、例外とすることができよう。

小売販売額(図H)が大きく下振れしたのもショックである。これも国策統計らしい不自然な滑らかさを持っていただけに、この幅での下落を隠さず出してきたことには驚く。消費者信頼感(図K)や非製造業PMI(図M)の下落も尋常ではなく、内需に大きな変化が出ていることに相違あるまい。

問題はこのように何でもない時に景気が悪化していること、そして図Qや図Xに景気対策の兆しがないこと、の2つである。当初は昨年2月以降の急速な回復の後のスピード調整のようにも解釈できたが、ここまで線の末端が下がると、厳しいコロナ対策や国威発揚などの緊張の連続が、進取のエネルギーを削ぐような状態になっているのかも知れない。