藻谷 俊介

2023年7月18日2 分

月例中国統計ウォッチ 6月分

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では、上昇余地をかなり残した緩やかな回復は、今、最もありがたいものであると結んだ。なお、デザインの変更に伴い、今号からグラフの順序が変わっている。

緩いが報道されるほど深刻ではない

6月も増産が続いた。図Aがその総合的な形勢である。図Bが示すリアルタイムの増加率は5%弱であり、政府の成長率目標と概ね合致している。

生産内訳のうちインフラ系の図D~Eはまだ底入れが覚束ないが、より付加価値の高い図F~Gは2桁増産が続いている。

国内消費、およびそれに関連する指標は徐々に回復速度を落としてきた(図L~M、P)。脱ゼロコロナでスパートした時期が終わりつつあるのは疑いなく、またどこかで減速しなければ維持できない伸び率だったのも事実である。半年と言うのはちょうどよい頃合いだったのだろう。

6月の社会融資規模は、利下げも奏功したのか多少反発して底割れは回避した(図W灰線)。しかしトレンド線を引き上げるものではない(同赤線)。インフラ系の図X~2の出来栄えは横這い+αと言うところで、もはや悪化してはないが、良くもないと言うところだ。

4-6月期のGDPも同じで、当社の季調前期比年率換算伸び率は1.1%と低い(図3、表4)。前年同期比で高いのは、昨年が上海ロックダウンで谷になっているからに過ぎない。4-6月期は春先のダッシュで強くなりすぎた目線が、どこの国でも裏切られる様相にあり、成長率は1-3月期対比では下がって不思議ではないが、スピード調整イコール不況ではない。

現在主流の中国経済悲観論は、大体インフラ部分か、遅行する失業率に偏っている。しかしそれらを含めても全体としてみれば、右上がりか下げ止まったグラフが大半だ。つまり、伸びは緩いが報道されるほど深刻な問題は感じられず、後は徐々に好循環が生まれるのを待てばよいと言うのが筆者の結論である。

英語メディアでは、経済が厳しい中国はデカップリングに耐えられずアメリカに頭を下げてくる、というような希望的観測がちらつくが、そこまで厳しいデータはないばかりか、図6~7を見て筆者にはまったくそう思えないのである。