藻谷 俊介

2023年6月15日2 分

月例中国統計ウォッチ 5月分

気を取り直す

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では、意外に大きな減産は一時的なものだろうと結んだが、正しかったようである。

実際に5月は生産が回復した。図Aがその総合的な形勢だが、当社季調値のみならず公表季調値も末端が上がっている。内訳のうちインフラ系の図C~Dは下がっているが、図B、特5~6は末端が上がっており、図Aの漸増傾向には変わりないと気を取り直している。図A’に依れば年率2%程度の緩やかな増産である。

国内需要の回復は徐々にスピードを落としながら継続している(図G~J、M)。反面、輸出には大きな反動減が出た(図S)。特8がいみじくも示しているように、シリコンの輸出が期待通りに続かず、一度出直しになったためであろう。とはいえ、グローバルな半導体出荷はさすがに大底であり(特9)、減産も強いられなかったわけで(特5)、今回は少し尚早だったとしても、もう一度トライするときには輸出も伸びていくことが期待できる。

逆に図S青線が示す輸入はプラスで、底堅さを示した。先進国からの対中輸出も概ねプラスであり、中国の牽引力は徐々に復活している(図T)。

懸案だった中都市の地価も先月以降ゆっくりと伸びている(特7)。上昇余地をかなり残した緩やかな回復は、今、最もありがたいものである。