藻谷 俊介

2021年6月18日2 分

月例中国統計ウォッチ 5月分

減速した状態が続く

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、すべて季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月は、今は急回復期が終わって従来の成長トラックに戻った状態で不況ではないが、警戒は怠るまい、と締めくくった。5月については警戒は解除して良さそうだ。

鉱工業生産は図A~A’が示すとおり中速(年率5%前後)を維持。失速している様子はない。発電量(図B)、セメント(図D)、半導体(特5)、自動車(特6)それぞれの末端は、まちまちの方向を向いている。また問題視してきた日米韓などからの対中輸出も、ジグザクをもって減速が表されている(図T)。貿易黒字の縮小傾向も続いている(特3)。

内需サイドでは、5月の小売消費は大きく増加した(図H)。コアCPIの上昇も続いている(図F)。ただ今回は3月のように非製造業のセンチメントの大きな上昇がなく(図M)、自動車販売も増加が続かないので(図J)、好調に見えてもジグザクの一つに過ぎないのではないかと考えている。

一方で設備インフラ投資系は、図Nの一段の悪化に加えて、先月も述べた建機稼働時間の縮小が続き(図X)、不動産開発景気指数も3ヶ月連続で低下したことから(図Y)、明らかに問題が生じていると思われる。

今の中国経済は、急回復期が終わって従来の成長トラックに戻っただけで不況ではないが、雲は増えてきた感じがあるので注意が必要だ。