藻谷 俊介

2020年6月15日2 分

月例中国統計ウォッチ 5月分

V字回復が広がる

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、すべて季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。4月はかなり強い数字が出る一方で、おや?と思う部分もあると述べたが、5月も回復は継続し、疑念は幾分薄らいだと言わざるを得ない。

3月に戻りすぎではないかと判断した図Aは、4月、5月もゆっくりと上げ足した。確かに不自然な強さではない。内訳を構成する品目別の生産グラフも、先月時点でV字的な線形で足並みが揃い、今月は更に安定した(図B~D、図特5~6)。半導体の生産は末端がマイナスだが、大きなものではないので、ぶれであろう。これもまた自然と言えば自然な変化であり、プロパガンダ的統計操作を感じない一因でもある。

先月号で戻りが弱いと指摘した小売販売額も、5月の上昇でかなり復旧している(図H)。これはぶれがなさすぎて筆者があまり信じていない統計なのであるが、それでも全体としての不整合性は減った。もう一つの問題点だった貨物輸送量も4月に小反発し、一応の底入れを見た(図R)。李克強チャートであり、5月にまともな上昇を見せれば、回復はほぼ疑いなくなると言える。

他方、3月に急上昇していた消費者信頼感だが、4月は再び大きく反落した(図K)。自分たちは3月に脱出に成功したものの、4月には世界規模の感染拡大となり、政治・経済両面で別の心配をしなくてはならなくなったものだろうか。

今号ではKOMTRAXという援軍も加わった(図X)。これは中国政府を通さない統計なので、ここでのV字回復が示す意味は大きい。5月に輸入が急減しているのは気になるが(図S~T)、先進国からの輸出は伸びているので、原材料価格の下落によるものかも知れない。我々輸出側にとって重要であり、来月以降も引き続き監視していくべき項目である。