藻谷 俊介

2023年5月18日2 分

月例中国統計ウォッチ 4月分

意外に大きな減産は一時的なものだろう

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では、完全に底入れし再加速してきた、と述べた。

ところが4月は、先月までのV字回復の流れに棹を差すかのような減産が見られた。図Aがその総合的な形勢だが、当社季調値のみならず公表季調値も末端が下がっており、内訳である図C~Dも同様だ。製造業のPMIが月初から先んじて示していた通りになったと言える(図L)。

しかし、期待外れな結果で中国政府の景気対策が不可避とか、政治的になりがちな海外言説は、たった1か月のことに大袈裟に過ぎるように思う。まず、減産の理由が見えない。国内需要の回復は途切れなく継続しているし(図H~J、M)、輸出も急伸している(図S)。つまり内外とも需要が弱いとは言えないのである。輸入が急減したのは一般的には良くないサインだが、4月まで入った日本の貿易統計も含め、対中輸出は回復中である(図T)。名目統計なのでエネルギーなどの価格減を反映しただけかも知れない。

むしろ懸案だったシリコン・サイクル周りでは、増産気配が続く(特5、8)。特に特5はわずかとはいえ4月に上げ足している。同じく懸案だった中都市の地価も4月はついに底入れが確認された(特7)。電力も消費は伸びている(図B青線)。このような状況を総合的に考えると、4月の意外に大きな減産は一時的なものだろうと推定せざるを得ないのである。