藻谷 俊介

4月17日2 分

月例中国統計ウォッチ 3月分

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では、「全体としては新年に入って景気が悪化した様子はないが、個々の指標には一部不安が出ている」としたが、今月は残念ながらその不安が拡がっている。

鉱工業生産は折れて急減速、なのに楽観?

これまで、生産が堅調であることが筆者の中国経済への相対的楽観の大きな根拠であった。だが、3月は図1が久々にくっきりマイナスとなり、速度計も年率7%前後から一気に減速した(図2)。図1青線の公表季調値も微マイナスである。

非常に問題なのは、最近になって新聞が中国経済がしっかりしてきたような言説を振りまいていることだ。前年同月比での分析は実態に対して平均6ヶ月遅行する。図2のようなリアルタイム指標で見れば、今はゼロコロナ撤廃以降初めての逆風下だが、6ヶ月前の筆者が言っていた「生産が堅調」と言う話を、新聞は今頃になってしているわけである。

一方で、先んじて下がっていた自動車、半導体の生産は3月に反発し、先月危惧した底割れは回避された(図6~7)。3月の減産は、図3~5のようなそれ以外の分野で幅広く観察されているマクロ的なものだ。ただ図6~7にしてもマイナスの傷は深く、平均速度は如何なるスパンで見ても落ちている。またSIA(WSTS)の世界半導体出荷額も、当社季調では2月に1年ぶりにマイナスになるなど、昨年の勢いはない(図34)。

貿易は、輸出数量は好調で問題ないが、内需を反映する輸入数量が上へ抜けない(図17~18)。これも、生産同様、昨年の方がまだ良かった、と言うべき状態である。

地価の低下はゆっくりと続く

地価の低下は、先月よりも減速したが、まだ続いている(図22~23)。実質消費にも、生産同様、多少の頭打ち感が出てきた(図11)。ただ、これが不況に向かう流れなのかとなると、非製造業PMIの改善(図16)やKOMTRAXの反発(図25)など、内需・インフラ系の統計でも良くなるものがあるため、そこまで悲観的に見る必要はないだろう。要は減速である。

GDPは当社季調で前期比年率5.3%で、偶然ながら前年同月比と同じ(表28)。4-6月期は再び5%を割るかも知れないが、中国の成長ポテンシャルが変わったようには見えない。