藻谷 俊介

2023年2月17日2 分

月例中国統計ウォッチ 1月分

暗い月に浮かぶ揉み合いの兆候

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では、中国経済が復調するのは早くて4-6月期以降とするのが現実的、と述べた。

中国ではある時期から1-2月の統計を合算して3月に発表する悪しき慣習が広がり、2月は国策統計を中心に一部の統計数値が発表されない「暗い月」であるが、それでも★印をつけた15枚は先月号から新しくなっている。

そして、それら更新されたグラフの多くで末端が上がっているのが、今回の特徴である。広く報道されたところでは、いわゆるセンチメントの指数、すなわち企業のPMIや消費者信頼感(図K~M)は12~1月にかけて反発した。これはゼロコロナ脱却の心理的効果と見做されがちだが、他にも良くなっている統計があるため、相乗的なものと考えても良さそうである。

特に筆者が懸念してきた金融と不動産価格の周辺が、多少なりとも改善してきた。広義のファイナンス量の増加を示す社会融資規模(図Q)は赤いトレンド線の末端が上昇し、弱含んでいた11大都市の地価(図P)や、一直線に下がっていた地級市の地価(特7)も下げ止まっている。

1月は自動車販売台数(図J)がさらに下がり、日韓からの対中輸出(図T)も続落するなど、製造業系のデータはまだ低下傾向にあるようだ。1-3月期はこれらのデータが揉み合う中で底が形成される百家争鳴の展開だろう。