藻谷 俊介

1月18日2 分

月例中国統計ウォッチ 12月分

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号までは、もともと好調なフロー面に加え、不動産、設備投資などストック面も改善傾向にあると述べてきた。しかし、12月はストック面の悪化が再燃し、筆者もかなり落胆した。世界景気全体も脱ポストコロナになってきており、多少目線を下げるべきではないかと悩んでいる。

インフラ系が再び崩落

12月の鉱工業生産は季調前月比+0.5%と更に伸びた(図1)。図2が示すリアルタイムの増加率は年率7.8%に達し、近年では頗る好調であると言って良い。

しかしその内訳を見ると、筆者が昨年楽観のキーとしてきた半導体生産(図7)こそ好調なものの、粗鋼(図4)、セメント(図5)のインフラ系の生産が嘘のような急落を示している。自動車の販売(図12青線)も前例のない高水準なので、さすがに伸びは緩やかになっており、生産(図6)にも強い牽引力は期待できない。

これと繋がっているのが、12月のKOMTRAX(建機稼働時間)の急落や総設備投資の二番底である(図25-26)。KOMTRAXは11月までは他の地域よりもずっと強い反発を示していたが、それを一気に失った。背景にある社会融資規模(総ファイナンス量、図21)も、トレンドは右上がりだが、単月の数値(灰線)は直近少し弱めだ。既に先月号で述べたように住宅価格の底入れには失敗しており(図23)、政府がファイナンスを支えて住宅のスムーズな建設と販売を行う政策は、なかなかうまく運ばないと言うことなのだろう。

中の中から、中の下へ

以上のような重荷は抱えているものの、中国経済が今から方向として調整期に向かうとは思っていない。巡航速度が多少下がるとしても、循環的な回復は続くだろう。上述の通り製造業全体の回復傾向は続いているし、実質小売販売額(図11)は12月も増加している。

10-12月期のGDPは前年同期比で+5.2%となったので、政府目標達成の報道が目立つが、表28が示すように前期比年率では+4.1%で既に低めになっている。ただし、危機的な低さでもない点が表現を難しくしており、取りあえず筆者は中国の景気は中の中から、中の下になったと考えることにしている。