藻谷 俊介

2023年12月16日2 分

月例中国統計ウォッチ 11月分

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、春節補正の季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では、もともと好調なフロー面に加え、不動産、設備投資などストック面の底入れがはっきりし、全体的に好調になってきていることを述べた。今月もそこから漸増した統計が多い。

全部が全部強いわけではないものの

11月の鉱工業生産は季調前月比+0.9%と大きく伸びた(図1)。図2が示すリアルタイムの増加率は年率7.1%になり、結構な勢いを回復している。

この鉱工業生産と、その内訳のうち、電力、粗鋼、自動車、半導体生産は、末端11月が多少マイナスのものでも、グラフの線形としては右上がりが定着している(図3~7)。また、上昇3か月目となったセメント生産も、一段と底入れがはっきりしてきた(図5)。

これと繋がっているのが、社会融資規模(総ファイナンス量、図21)の増加傾向と、KOMTRAXの一段の増加である(図25)。こうしたまとまりの良い動きを見ると、確認はできないものの、一部の公共事業が再開されている可能性もある。

一方で、先月号で期待した住宅価格の底入れには失敗した。10月には地級市の地価がマイナスから横ばいになり(図23)、不動産開発指数も下げ止まっていたが(図24)、11月になると地価は再び下落している。仮に公共事業一部復活したとしても、住宅価格の上昇には直接的に繋がるわけではない。それでもストック面の戻りが始まっていること自体のメリットはあると言うべきだろうが。

輸出入数量は単月では反落(図17)。それでも上昇傾向が覆ったわけではない。諸国からの対中輸出も、底入れの線形がはっきりしてきた(図18)。日本はドルベースでは底這いだが、数量ベースと円ベースでは伸びている。

実質小売消費は11月も上げ足し、連続して過去最高値を更新した(図11)。また、少し頭打ちになっていた自動車販売台数も、再びプラスになって過去最高値を更新した(図12青線)。後は下がるばかりというものではない、という先月の予想は正しかったことになる。

全部が全部強いわけではないものの、全体としては段々と堅調さが増している中国経済である。