藻谷 俊介

2021年11月18日2 分

月例中国統計ウォッチ 10月分

もうこれ以上は悪くならない展開に

ほとんど季節調整されていない中国の統計を、すべて季節調整ベースで並べて観察するのが月例中国統計ウォッチである。先月号では「むしろ改善を待っているタイミングである」と前向きな姿勢に転換したが、果たして10月はそれに応えてくれただろうか。少しだがイエスだ。

先月、鉱工業生産は図A末端の形状と図A’が示す平均伸び率がどちらも完全なフラット化を示したが、10月は2枚とも多少末端が上がった。発電量(図B)の頭打ちは続き、粗鋼(図C)、セメント(図D)は前例のない減産が続いているが、自動車(特6)、半導体生産(特5)がある程度は回復した。川下の財が動き出したことで、図Aが下がってくるような展開は避けられつつあると考えている。良いタイミングで社会融資規模も上向いてきた(図Q)。

小売販売額(図H)は2ヶ月連続で上昇し、戻り十分とは言えないが、不安感はなくなった。消費者信頼感(図K)も同様だ。一大消費財である自動車の販売も、トレンドを覆す強さではないが、10月はまずまず上昇している(図J青線)。先月号で改善の糸口の1つは消費としたが、実際にその方向性は見えてきたようだ。川上のインフレ再燃は気になるが(図G)、コアインフレが弱いので(図F)、全体としての消費者物価上昇は抑制されている(図E)。

もう一つの糸口は輸出に求めたが、こちらもさらに加速している(図S)。貿易黒字も歴史的高値である(特3)。まだまだ低迷している中国経済だが、ファンダメンタルズは徐々に改善してきているように思われる。