別府 浩一郎

2023年3月4日2 分

旧ベースで見たユーロ圏消費者マインド

ユーロ圏株はロシアのウクライナ侵攻で大幅下げを余儀なくされたものの、昨年9月末以降の戻りは目覚ましい。直近2月のユーロ圏景況感では、製造業信頼感指数、サービス業信頼感指数が前月比で小幅悪化だが、後者に関してはウクライナ侵攻、高インフレの影響が限定的と見ることも可能だ。消費者信頼感指数は正に昨年9月をボトムに、今2月まで5ヵ月連続で改善している。同指数の構成要素では「今後1年の経済全般の状況」DI、「今後1年の家計の資金繰り」DIが大きく持ち直している。

現行の消費者信頼感指数には雇用に関する項目を含んでいない。「今後1年の失業懸念」を含む旧ベースの消費者信頼感指数で見ると、昨年9月以降の改善ぶりが一層明確となる。具体的には、現行の消費者信頼感指数が昨年9月-28.7から今2月-19.0まで9.7ポイント改善に対し、旧ベースでは-26.0から-12.3まで13.7ポイント改善した。ユーロ圏主要4ヵ国の新旧比較では、フランスだけ例外的に両ベースの差が小さい。失業率の実績推移ではフランスも極めて落ち着いている。もちろん、今回、雇用の堅調さはユーロ圏に限った話ではない。ただ、ウクライナ侵攻の直接的インパクトが最も甚大だった地域の消費者にしてみれば、失業率が悪化しなかったという事実は大きい。雇用の堅調さは物価の下がり難さにも繋がるものの、「物価も失業率も上がるよりは遥かにマシ」とも言える。もっとも、消費者の物価沈静化期待が前のめり過ぎることは否めない。マインド改善の所得格差も大きい。