藻谷 俊介

2023年4月3日2 分

日銀短観 3月調査

別府式サイクルチャート(動作原理は次頁下のダイヤグラム参照)は、回転しながら景気の現在の位置を示す。

過去数回の調査では、全規模全産業と、そのうちの大企業製造業との違いがどんどん拡大してきたが、今回もさらに乖離が進んだ。このような経験は記憶にない。3月には、ウクライナ侵攻によって全規模全産業(図A)も、大企業製造業(図B)も、屈折して左下方向に向かった(22脇の◆)。その後、全規模全産業は図Cの東日本大震災の時と類似したペン先形状で右上に戻り、12月調査にかけて更に右方向へ移動して、極めて普通に好景気の周回コースを辿っている。しかし、大企業製造業だけに限ると、今回3月調査に至るまで左下へのだら下がりを続けている。つまり、日本経済全体としては順調だが、大企業製造業に限ると「不況っぽく」なっている。

右記事はまだインフレ頭から抜け出せないようだが、月次統計が示すように今は数量の悪化であってもはや価格ではない。また、直近の世界的な生産の回復から、筆者は図Bも折り返すと考えている。

概要冊子(https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2303.pdf)の3~5頁で2022年度の売上、利益の修正幅を見ると、製造業は全般に業績の上方修正から下方修正へと転換している(非製造業は上方修正)。設備投資も下方修正だ。ただし2頁左下の価格判断が幅広く下がっていることからも、3月の修正がインフレではなく、需給悪化(数量低下)によるものであることは明白だ。そもそもインフレが厳しかった昨年は上方修正の連鎖だった。記事は的を外している。