別府 浩一郎

2022年5月21日2 分

広がる調整の裾野

S&P500セクター別相対株価を見ると、IT以上に下落が激しいのが一般消費財である。ここにAmazon.com、Teslaが属しており、これらの暴落が大きく響いている(直近でもこの2銘柄だけで同セクターの4割以上のウェイト)。先週はオーソドックスな小売銘柄であるTargetが業績悪化で大幅安となり、更に足を引っ張る形となった。一方、WalmartやCostco Wholesaleが属する生活必需品セクターの相対株価は、昨年11月19日をボトムに5月12日まで反発。ディフェンシブとしての本領をようやく発揮したが、先週はこれらも売られた。結局、先週のS&P500種下落率上位10銘柄のうち、8銘柄がTargetなど一般消費財、残る2銘柄がWalmartやCostco Wholesaleだった。米国小売売上高は、実質値は3月分までの発表で、その前年同月比は-5.5%まで落ち込んでいる。しかし、金額自体で見た場合、コロナ禍以前のトレンドからまだ上振れた位置にある。

住宅関連では金利急上昇が借換中心に住宅ローン申請件数が急鈍化。住宅着工件数への影響はこれからだが、中古住宅販売件数は本年1月を直近ピークに急鈍化している。幸い、中古住宅販売在庫月数は極めて低い水準にとどまる。ただ、住宅購入に対する消費者のセンチメント、今後半年の戸建住宅販売、購買見込み客足数に関する住宅建設業者の見方はいずれも悪化。調整の裾野が広がる中、メディアでは「歴史的米株安」という文字も躍るが、金融ストレス指数やITセクター相対株価の動きを見る限り、今はまだ「粛々たる調整」の域にある。