別府 浩一郎

2021年10月18日2 分

堅調な米国株と米中小企業の厳しさ

米国株は9月初めに一旦ピークアウトしたが、堅調な企業業績などを背景に足元でまた勢いを盛り返しつつある。生活必需品、ヘルスケアという「守り」のセクターの相対株価がごく直近で安値を更新していることは、市場参加者の強気が維持されていることの表れと言えよう。過去の経験則と異なるのは、同時に、資本財、素材の相対株価も弱含んでいるということだ。世界経済の見通しには慎重さを持ちつつ、金融、エネルギー、一般消費財の各セクターに資金は相対的により流れ、最大の時価総額を誇るITセクターには滞留し続けている。これまでのところ、FRBの金融正常化に向けての姿勢は悪影響を与えていない。住宅価格指数や米消費者のインフレ予想の高さを見ても、金融正常化は粛々と進めることが妥当だ。そういう意味では、報道されているFRB議長の投資信託売却問題は、事実であれば憂慮すべき材料ではある。

米国中小企業のサーベイ調査では「販売価格」の「上昇」超幅が実績、計画とも過去最高水準。仕入価格の上昇を転嫁する姿勢の鮮明さは日本の中小企業とは比べものにならない。人材難・人材不足の中、「賃金」も引き上げざるをえない。トータルで「利益」のモメンタムは悪化している。S&P500種に含まれる巨大企業のようには行かない。そうした状況下、「経済全般見通し」は-33で、2012年12月-36以来の低水準。「事業拡大見通し」もコロナ禍前の水準に遠く及ばない。これらの低迷が2016年のトランプ大統領誕生に繋がっただけに、将来的な政治面での不安定化が懸念されるところだ。