藻谷 俊介

2023年9月10日1 分

労働関連統計 7月分

◆雇用人数 異なる統計の、往々にして異なる結論を、恣意性なしで単純な星取り表として考えるのがここでのポイント。雇用の絶対「数」の動向を示す図2B青線、図2D青線、そして図2Eの「雇用三羽ガラス」は、季調前月比で1勝0敗2分で、マイナスになったものはないが、先月より勢いが多少落ちた印象。

◆所得 リアルタイムで見ると、1人あたりの実質賃金は昨年末から下げ止まっており(図2G赤線)、それに雇用人数をかけて企業の支払総額(社会の受取総額)にしたものは、1月を底に増加に転じて既に6か月になる(図2K赤線)。そのリアルタイム増加率も5.0%と強い。毎月勤労統計が実質化に使う「帰属家賃を除くCPI(図3K)」はリアルタイムで3.0%と総合インフレ率の2.6%より高いが、それでも実質で1.9%(≒5.0-3.0)の伸びが残る。1人当たりでは横ばいでも社会全体の実質所得は伸びており、それに伴い実質消費も伸びてきたと言うのが実情である。

◆時間 7月は景気一致指標である所定外労働時間のグラフが反落(図3A)。総労働時間も減少してしまった(図3B)。

所得だけは悪くないが、全体的に労働統計は6月対比で幾分後退したと言える。これは景気動向指数と共通したぶれ的な波動であり、趨勢の転換ではないと考えている。