藻谷 俊介

2023年1月13日2 分

今年は定点観測から... 今回は米CPI

例年なら幾分無理をしてでも、年初号で一年を望見するような文章を書くのだが、貿易戦争、コロナ、ウクライナと、書いた直後に激変でひっくり返されることが最近多い。金融市場の日程好きは知っているものの、統計的には1月1日も、例えば8月24日も同じ通過点に過ぎない。昨年末に「小刀を振り回す分析」を志向した通り、今年はあっさり定点観測で始めた。

さて、第2号となる今回は、昨晩発表されたばかりのアメリカCPIをアップデートする。ほぼ3ヶ月前の10/17号『木を見て森を見ず』で、市場がCPIの読み取りに失敗していることを述べたので、その時に使用したグラフ類が3ヶ月経ってどう変わったかを並べて比較してみよう。いずれも、左が3ヶ月前、右が今回、という並びになっている。平均速度が変わっているものは、読者の指摘で過去5年間の平均を10年平均に延ばしたことによる。

図Aがいみじくも示しているように、6月を境にして年率10%インフレから2~3%インフレに屈折している。にもかかわらず秋になっても高率利上げを続けたパウエルFedと、米政策一本槍の株式市場を筆者は批判したのである。青矢印はそれを後追いするに過ぎない。

一方で森ではなく木(サービス価格)を見るなら、多少は減速したが(図B)、自動車価格が軟調なのに(図F)保険料が2桁で伸びていたり(図E)、地価が下がっても(図C)家賃が引き続き高率で伸びていたり(図D)、不埒な枝葉は健在だ。しかしこれらはFedがマクロ政策で対応すべき問題ではないだろう。雇用2%増(図H)、賃金4%増(図J、実質2%)はほぼ正常域だ。