藻谷 俊介

2020年10月22日3 分

コロナ拾遺 11

期せずしてコロナ拾遺10から時間が経過してしまったが、公約通り、データのアップデートは続けたい。

欧州の感染増加動向

欧州は再ロックダウンで、景気への影響が心配されている。とは言え、以前、中国の感染対策で説明した狭地域限定のロックダウンが志向されており、国全体への影響はそれ程ではないと推測する(現在の中国の経済統計のように)。

また、コロナ拾遺9で述べたように、ここからは感染者数よりも死者数が重視されるだろうと言う点で言えば、足元で大騒ぎになっている独仏英(図X~Z)でも死者数は第一波より1桁少なく、図K、L、Pとは高さが逆になっている。ここからロックダウンが効けば、死者が遅行して増える分をシミュレートしても、第一波より高くなることはほぼない。拾遺9で日本について述べたのと同じく、①治療ノウハウの進歩、②トリアージ(重症者選別)の進歩、③感染者の平均年齢低下、などが効いていると考えられる。

トランプはほぼ回復、メラニア夫人は快癒せず

拾遺10を書いた後で、大統領への投薬の正確な順序が判明した。まず、10月2日の入院前にホワイトハウス内で米リジェネロンのREGN-COV2を点滴、同日旧海軍病院に空輸された後にレムデシビルの標準5日点滴パッケージを開始、そして3日以降肺炎症状に対してデキサメタゾンを投与、それとは別に2回酸素吸入が行われたことになっている。REGN-COV2が先だったのだ。

トランプの主治医ショーン・コンリーは、正式な医師ではなく大統領の歓心を得て整体師から成り上がったハンサムな元アフガン出征軍人。現代の柳沢吉保だ。恐らく大統領を気持ちよくさせる言葉や態度を持っているのだろう。彼は記者会見の表向きの顔だったが、毒性もあるヒドロキシクロロキン(トランプがイチオシして予防のためと称して飲んでいた薬→効かなかった)を飲ませるなど医師としてはまったく無能で、今回も大統領の病状について最初から嘘ばかりついていた。代わりに筆者が注目したのは、医師団のうち彼のすぐ後ろに立っていて、時々マイクを任され説明をしていたジョンズホプキンズ大学医師のブライアン・ガリバルディだ。ガリバルディは、エボラ出血熱の治療を手がけていた人物で、リジェネロンのREGN-EB3が昨年エボラに卓効(早期投与なら94%の治癒率)を示したことを誰よりもよく知っているはずである。星の数ほどあるコロナ未承認薬の中から、同じ手法で開発された姉妹薬であるREGN-COV2がぽつんと選ばれたのはこうした経緯だと思われる。

メラニア夫人は自然療法による治癒を望み、自己の免疫だけで体内からウイルスは駆逐できたものの、後遺症の咳に悩まされて選挙活動を控えていると言う。トランプは精力的に活動を再開したが、時折肩で息をしたり演台に寄りかかって話をしている。一度は肺炎症状を示した70歳を超える老人が、正味3日で退院できたというのはREGN-COV2の効果以外考えられないが、だとしても治った後も大変なのがこの病気の怖いところである。