藻谷 俊介

2021年9月15日2 分

PPI企業物価 8月分

先月のコメントをほぼそのまま繰り返すことになる。

いつもながら前年同月比では判断が遅くなり、強いインフレが襲いかかっているかのように誤解してしまうが、季節調整ベースの図2A~Bでは勾配が緩やかになっており、その勾配の変化を示す速度計(図2C~D、リアルタイムのインフレ率)は、3ヶ月連続でインフレ率の低下を示してきた。もうインフレは収束方向に向かっているわけだ。

これはクルマのスピードメーターに喩えると分かりやすい。前年同月比と言うのは、例えば1時間前と比べて何キロ移動したかで速度を計算するようなものだ(=1時間の平均速度)。それは12ヶ月前からの1年間の平均インフレ率を示しているに過ぎない。それではクルマは運転できない。なぜなら今この瞬間に何キロで走っているのか、加速しているのか、減速しているのかが分からないからである。それを知るためには季節調整をかけてリアルタイムの速度を計算するしかない。過去1時間の移動距離は増えたかも知れないが、足元ではアクセルペダルから足は離れてクルマは減速している、これが現状だ。

輸出入価格についても減速は始まっており、図5C~Dのグラフ内に示された6ヶ月モメンタムも、先月号よりすべて小さくなっている。デルタ型とインフレのダブルパンチではなく、デルタ型がもたらす経済活動の自粛よって、インフレは収まってきていると認識したい。