藻谷 俊介

2021年6月11日1 分

PPI企業物価 5月分

右図の通り、確かに前値同月比のPPI伸び率は約10数年ぶりの大きさではあるが、今さらインフレ懸念を言うのはいささか的外れというのが筆者の考えである。

なぜなら季節調整ベースの図2A~C(そして計算上はDも)では勾配が緩やかになっており、リアルタイムのインフレ率は既にピークを超えた公算が高くなっているからだ。筆者が常々重視している契約通貨ベースの海外価格(図5C~D)も同様である。また本日付のWeekly Economicsで書いたように、主要17ヶ国(G17)PPIに至っては、5月速報はわずかながら下落している。

コロナによる昨年のデフレが3ヶ月程度と非常に短期に終わり、各国の景気指標も急坂で回復する中で、逆にインフレの憶測が高まり、一部の素材価格に実態に裏付けられていない迷惑なインフレが発生していた。図2E~3Lを見ると、川上には垂直に上昇するような商品もある一方で、高付加価値品の多くはほとんど上昇していない。これは中央銀行にとって政策を調整しにくい非常に迷惑なインフレだったのである。上で述べたようなインフレ沈静化もあって、欧州中銀は緩和措置の延長を決定したが、新聞がそのことを意識するのはいつなのか。