藻谷 俊介

2021年11月21日1 分

PPI企業物価 10月分

沈静化してきていた川上のインフレ率は、10月、再び加速した。リアルタイムのインフレ率は9月に5%に迫りながら、10月は総合で8.1%、エネルギーを除いて6.6%に上昇している(図2C~D)。

供給不足の逸話に基づいて、物価上昇が一部の素材に投機的に発生している状況に変化はない。2~3頁で内訳を見ると、足元は何と言っても石油石炭製品の年率3割という再高騰(図2K)に、引き続く金属類の価格上昇(図3A~C)が加わって、一部の素材エネルギーだけが上昇している形である。そして付加価値の高い機械類(図3D~)になると、今も年率1%前後の価格上昇でしかない。つまり、経済学的な意味での「インフレ」という呼称すら該当しない状況である。

むろん、これは短期的には川下の加工業種の収益悪化を意味するが、同時に投機が続く理由がないことも示している。各国の政府が、便乗値上げの検挙を強めているのも、需要なき物価上昇にマクロ的な理由付けができないからである。一旦落ち着きかけたところから、図2C~Dが再び上昇したことには落胆するが、その上昇がまだ大きなものではないため、再収束に期待を残したい。