別府 浩一郎

2020年12月19日2 分

FRBの妥当な選択

米国経済の見通しはパンデミック初期の底が見えないような状況から上振れて来たものの、失業率の改善スピードが鈍化していることもあり、FRBはFOMC声明でゼロ金利・量的緩和の長期継続を改めて強調した。FF金利先物市場では、今回FOMCの前後で大きな変化は見られない。米国株式市場は主要3指数が揃って最高値を更新する形で歓迎を表した。S&P500指数は9月末比で10%も高い水準にある。住宅価格も底堅い。これらを前提に足元のストック・フロー・レシオ(=米国家計純資産/個人可処分所得)を概算すると、19年第4四半期にほぼ並ぶ水準と推察される。この面からは、FRBが緩和姿勢を強調しつつも、国債800億ドル、MBS400億ドルの月間買入額を据え置いたことは妥当と言って良い。

米国住宅市場に関してはローン金利の一段の低下もあり、住宅ローン残高(ホーム・エクイティ・ローンを除く)は漸増を続けている。借換も含めた新規貸出額は本年第3四半期1.05兆ドルと、ITバブル崩壊後の低金利政策下、借換ブームにあった03第3四半期1.06兆ドル以来の高水準となった。違うのはサブプライム層向け比率であり、前回15.0%に対し、今回は4.4%に過ぎない。サブプライム層向け比率がピークに達した07年第1四半期25.6%とは比べるまでもない。住宅ローンとは逆にクレジットカード・ローン残高は減少。家計債務全体では過去4年ほど前年比3~4%増が続いている。