藻谷 俊介

2021年12月9日1 分

CPI消費者物価 10-11月分

当冊子のキーチャートである図2M黄線(図2Gを拡大したもの)は、11月に多少下げ止まったが、デフレ圧力は続いている。唯一インフレ的であるエネルギーを加えた図2M青線であっても、夏場よりは低い。携帯通信料の下落とエネルギーの上昇が相殺し合って、都内の平均的家計では、騒がれたようなインフレの被害はなかったことになる。自家用車利用の多い地方を含めた全国では、都内と比べてエネルギー消費が大きいので、黄線と青線の格差は大きいが(図2L)、それでも青線は特筆すべきほど上昇しているわけではない。

筆者が述べてきたように、逸話的に語られ続けてきた大型インフレ・ストーリーは、世界の弱いマクロ経済状況から見て維持可能ではなく、最近はオミクロンを言い訳にして原油価格や商品相場が下がってきている。であれば、今後はますますインフレ説は言いにくくなってくるだろう。欧米では、在庫囲い込みや出し惜しみなどによる意図的な便乗値上げに対して、刑事罰も適用されるようになっている。日本では、政府はお金もないのに石油元売りに補助金を出すなど、時季外れで見当違いの政策が打たれている。貧すれば鈍すとは、まさにこのことか。