藻谷 俊介

2021年9月10日2 分

7月の統計を概観して

いまだ悪化フェーズには入らず

7月は第4次緊急事態宣言(7/12~)が始まり、オリンピックへの警戒もあったため人流が鈍り、悪化した統計が多い。またこうした国内の小刻みなコロナ波動とは別に、外需も優れなかった。引き続きグラフで注目すべきは趨勢だが、頭打ちだがはっきりとは下がらない状況が続いている。

7月の鉱工業生産は、最終的にまずまず上昇することができたが、8-9月予測はここから伸びないことになっている(図A)。減速しながらも後退を免れていた輸出数量も、7月はついに微妙に後退(図N赤線)。中国経済の減速に端を発した世界鉱工業生産(図Q)や世界輸出数量(図R)の頭打ち感とも平仄が合っており、やはり中国経済が勢いを回復しないうちは、グローバルな回復が望みにくいことが示されている。

内需サイドも、基本的には減速基調である。消費(図F)、鉱工業生産を除くベースの総合CI(図E)、第三次産業活動指数(図D)は、程度の差こそあれいずれも頭打ち的である。

とは言え、先月も書いたように、景気のピークアウトが確定したとは言えず、今ならまだ踊り場で済む可能性も残している。いまだに平均賃金の上昇パスは崩れず(図L)、在庫も意図せざる急上昇には至っていない(図C)。堅調な設備投資も景気を下支えしている(図G)。持ち堪えつつ、減速の主因である中国の景気が上向くのを待っているような状態だ。