藻谷 俊介

2023年6月6日2 分

4月の統計を概観して

幾分かのスピード調整

先月号では、内外で回復基調を示すデータが多数を占めるようになり、回復が始まっていることは9分9厘間違いないと考えている、と述べた。4月は勢いを落としたり、下方にぶれるグラフが多いものの、その度合いは軽微であり、回復の方向性に変わりはないと思われる。

4月の鉱工業生産は上げ足した(図A青線)。ただ、5-6月予測の赤線は横這いに近く、かなりの減速感がある。とは言え、図Bの計画修正幅に大きなサプライズ(マイナス)はなく、図C赤線の在庫率も頭打ちなので、意図せざる在庫増(不況に向かう変化)とは考えにくい。状況に応じて多少生産の勢いを落とすスピード調整のようなものと考えられる。

日本の輸出数量は3-4月でそれなりに明確な底を形成し(図N赤線)、世界輸出数量も増勢にあることは疑いなくなった(図R)。先月号では今一つだったが、この1ヶ月で外需の反転上昇はむしろよりはっきりした。

実質消費は単月では下げ足したが、下げ幅は縮小してトレンドは上昇を維持した(図F)。同様に第三次産業活動指数(図D)、総合CI(図E)も単月ではマイナスであり、4月の内需の減速は否定できないが、いずれも底割れではない。リアルタイムの実質給与も同様である(図L赤線)。

消費者物価の上昇の勢いが低下してきたことが図Jからも窺える。恐れられたインフレは、コロナ明けの内需の勢いで乗り切ることができ、ここから外需がそれを引き継ぐパターンになると想定している。