藻谷 俊介

2023年5月10日2 分

3月の統計を概観して

内外で回復が始まっていることは間違いない

先月号では、2月の鉱工業生産が内外ともに反転し、不況とは反対の方向に向かっていることを示し、まだ勢いは弱いが底は入れた公算が大であると主張した。今3月も内外で回復基調を示すデータが多数を占めるようになり、回復が始まっていることは9分9厘間違いないと考えている。

3月の鉱工業生産は上昇を続け、1月が底になった形(図A青線)。4-5月予測の赤線もそこから上げ足している。図Bで計画修正幅を見ると、見込み違いはますます縮小する傾向にある。この状態で不況を予測するのは難しい。在庫サイクルを懸念する向きもあるようだが、絶対的な在庫量(図C青線)は過去10年の中で特に高いわけではなく、出荷が減ったことで在庫率(相対在庫、同赤線)が計算上高まっているに過ぎない。景気が回復し、出荷が伸びるようになれば赤線は自ずと下がり始める。

筆者が注目してきたシリコンサイクルの底入れは、韓国の半導体生産などまだ一部のデータに現れたに過ぎないが、それ以前に世界的な自動車販売の回復で、日本の輸出数量は3月に微かに上昇(図N赤線)。世界輸出数量も増勢か、控えめに見ても底堅い(図R)。

実質消費は単月では反落したが、トレンドは上昇を維持(図F)。第三次産業活動指数はますます好調になり、内需の強さを示している(図D)。インフレも減速し、リアルタイムの実質給与も増勢が定着してきた(図L赤線)。今月は世界景気先行指数がついに反発したことも大きな朗報だ(図U)。