藻谷 俊介

2月9日2 分

12月の統計を概観して

日本経済は秋頃まではある程度の堅調さを保っていたが、徐々に勢いを失い、11月も露呈したのはまず弱さだったと述べた。ひと月を経て蓋を開けると、12月は更に一段と弱くなっている。さあ、これで金融正常化はできるのだろうか。

生産は大幅マイナスの予測

12月の鉱工業生産は極くわずかにプラス(図A青線)。先月時点で予測線はわずかに右上がりとなっていたので、それを遠慮がちに踏襲して、横ばいトレンドを維持した。しかし、そこまでだった可能性がある。1-2月の予測線は急落だ。

速報レポートのEcoShotでは、いくつかの理由を挙げて、実際にはここまでの悪化にはならないと予想した。だとしても、不穏だ。ダイハツ不祥事はともかく、その後発表されたトヨタ1月の前年比2桁もの国内販売減は、何を意味するのか。トヨタは部品調達に対応できたとしており、震災でモノが作れなかったわけではない。何となくここでもコロナ明け特需が一巡してしまった可能性が高いのではと不安になる。

先月指摘した輸出数量の連続下落も、12月は多少反発したために止まったが、それでも復活と呼べる戻りではない(図S)。図Sの再上昇を確認できるまでは、日本経済に曖昧な楽観は危険と言えよう。

内需はますます弱い ... しかもまだ震災前なのに

また、それ以上に問題なのは、消費の急落である。消費は複数の指標を見る必要があるが、図D~Fの揃った下がり具合は、これはもう幻覚ではない。1月なら震災のせいにもできるが、これらはまだ12月までの統計なのである。

CPIも1月東京は一層弱含んだ(図L)。ここには1/26号で書いたインバウンドの衰退や震災が効いているだろう。後者だけなら恐らく一時的だが、前者は昨年からの流れである。日本版コアコアの黄線でも、リアルタイムでは1.2%しかない。今、内需で頭が上がっているのは公共工事だけだ(図K)。

日銀が石橋を叩いているうちにひびが入った?

ともかく事態は常に変化しており、直線的予想は危険だ。日銀がゼロ金利を解除できたとすれば昨年後半であり、昨春から強気だった筆者は何度か促してもいる。しかし日本の官僚制の宿痾と言うべきか、間髪入れずは苦手なのである。