藻谷 俊介

2023年1月11日2 分

11月の統計を概観して

末端が低下するグラフが増えたが、不況入りの条件を欠く

先月号では、ピークアウトか、踊り場か、となれば今は踊り場の公算の方が高いと考えていると述べた。1ヶ月経って、グラフの末端が低下したものが増えたが、トレンドがターンしたようなものはなく、多少下がっても踊り場の範疇に属するものが多い。よく持ち堪えている。

11月の鉱工業生産は、2ヶ月連続で減少した(図A青線)。しかし合わせても減産は小幅で、過去2年間に何度か経験した谷よりも浅い。また、企業のネガティブ・サプライズは更に縮小しており(図B)、むしろシリコンサイクルと戦争に振らされたここまでが予想外だったと言うことができよう。在庫も急上昇した時期は過ぎて、このところは頭打ちである(図C)。

今月は消費統計にもはっきりマイナスが見られる。家計調査の集大成とも言うべき世帯消費動向指数・総世帯は前月比でマイナス(図F)。ただこのグラフもトレンドを見ると悪くて横ばいであり、マイナスではない。内需をより反映する「相場と鉱工業生産系を除く総合CI」も、ぶれながら引き続き増勢を残している(図E)。他の国も概ね内需>外需なので、外需・鉱工業系だけを見ると悲観バイアスが掛かることになる。

民間設備投資にはブレーキがかかっており(図G)、公共投資も一段減少した(図H)。しかしそれは国内勢の話で、外国勢はまだ設備投資に熱意がある。世界景気波動(図U)も既に不況1回分を織り込んでしまっており、膨れていない風船が破裂するというのはあり得ない気がする。