藻谷 俊介

2022年1月11日2 分

11月の統計を概観して

改善が拡がる

先月号では、景気指標の下げ止まり予兆を論じて、「景気後退は回避されたと考えられ、期待しながら推移を見守ることにしたい」と述べた。11月の指標は、内外共にその期待に応える形で改善するものが増えてきた。賃金など遅行指標に弱さが残っているのは仕方あるまい。

11月の鉱工業生産は、先月号の予測線以上に反発し(図A)、その反動で12-1月の予測線は幾分下がった。先月のように先々の見通しも一段と上がる形ではないので、少し勢いが落ちたとも言えるが、図Bが示す計画修正幅は改善しており、ジグザグしながらも着実に上昇するパターンだと思う。

輸出数量は2ヶ月連続で増加し、輸入数量も反転した(図N)。これは鉱工業生産と連動した変化であり、さら言えば日本だけではなく、国際的にも見えてきた変化である(図Q~R)。動き出した感は明らかであろう。

11月は実質世帯消費支出の増加も続いている(図F)。鉱工業生産以外の総合景気循環指標も先月に続いてプラスで(図E)、サービス生産も10月はプラスに転じた(図D)。実質給与の遅行的悪化(図L赤線)は問題だが、貯蓄は退蔵されており、使う気になることの方が重要と先月号で述べた通り。

オミクロンによる猛烈な感染急増は世界中でベッド不足を招き、それ故に政府は国民の関心を新規感染者数から死者数(重症者数)へ移さざるを得ないとすれば、むしろエンデミックに近づくというのが筆者の考えであり、徐々にそうした国が増えて、景気悪化は限定されると予想している。