藻谷 俊介

2023年6月1日2 分

1-3月期 法人企業統計

財務諸表も季節調整ベースで見るのがスフィンクスの方法であり、当レポートはその点が他社にない最大の利点である。水準が分からない上に判断を遅行させる前年同期比ではなく、あくまで10-12月期までと比較し、併せて長期的な水準や流れを見ていくことになる。

2頁で損益計算書を上から見ていこう。売上は10-12月期比で年率4.2%増加し、10-12月期の同2.4%から再加速(図2A)。原価の伸びが緩み(図2B)、粗利益は10-12月期の横ばいからいきなり2桁の上昇(図2C)。販管費(図2D)と人件費(図2E)も結構増加したが、営業利益は反発(図2G)。経常利益も同30.7%と大幅上昇した(図2H)。ただし、グラフが示すように過去最高値ではない。右記事はあくまで1-3月期として最高と言っているだけである。

端的に言えば、前四半期までの景気調整色の濃い財務諸表から、再び増収増益に戻ったわけで、景気の底入れを考えれば不思議のない内容である。確かに世界のインフレ鎮静で原価(図2B)が失速する一方で、遅れた価格転嫁をしている日本では利益が伸びやすい。ただ、それだけなら時間差による利益のシフトに過ぎないが、人員数(図2F)や設備投資(図2J)の加速的増加に現れた攻めの姿勢には、それ以上のものが感じられる。

ただし、製造業と非製造業とで趣きが随分と異なることには注意したい(4頁)。製造業は引き続き調整期にあると言えるだろう。ただその製造業も設備投資には再び熱心になっており(図4J)、全体として攻める意欲が強くなっているように思われる。